大分県中津市山国町の、

むかーしむかしの事じゃった。

​

ある日、旅人がやって来て

「今晩泊めてくれ」と言う。

家主はこんな山奥で

ひもじい思いをしている旅人を

不憫に思い、

少しばかりの食事を用意し、

旅人をもてなした。

​

夜も更け、

寝床を用意した家主に旅人は

「寝ている間、

私の姿を見ないでください」

と言う。

そう言われると

見たくなるのが人間のさが。

皆が寝静まった頃、

そーっと

旅人の寝床を覗き込む家主。

家主の目に映ったのは、

大きな大きな龍の姿だった。

​

アニメ「まんが日本昔ばなし」

にも取り上げられた龍神伝説は

​龍のおやどが位置する

この集落が舞台。

山頂に八大龍王神社を有する

中摩殿畑山から流れる清流は

今も昔も

龍神が行き交う

登山道なのかも知れない。

そんな清流沿いにある

龍のおやどに訪れる人々は

龍神様との

ご縁が深い人達なのだなあと

現代の「龍のおやど」店主は思う。